カチン ポータルサイトとは

カチン人の言語文化に関する情報資源を効率的に探し出すための玄関口となるポータルサイトです。カチンに関する文献の目録、カチン人とその言語の概要、対照語彙、テキスト集、カチン地域の地図、カチンの民俗写真などを公開します。

カチン人とは

民族カチン(Kachin)人は、ミャンマー北部のカチン州とシャン州北部に居住するミャンマー有数の民族の1つです。中国徳宏傣族景頗族自治州に居住する景頗(Jingpo)族、インド北東部アッサム州とアルナーチャル・プラデーシュ州に居住するシンポー(Singpho)人も同一の民族です。カチン人は、ミャンマーの8つの主要民族、すなわち、カチン、カヤー、カレン、チン、ビルマ、モン、ラカイン、シャンの1つであり、同国有数の民族であるといえます。

地理カチン人が最も多く居住するカチン州はミャンマー最北の州であり、中国およびインドとも国境を接しています。カチン地域の多くはカチン山地と呼ばれる山地世界です。これらの山地は人口密度が低く、言語・民族的に多様な地域です。ミッチーナー、バモー、プータオなどのカチン州の主要都市は平地に位置しています。ヒマラヤ氷河に起源を持つマリ川 (Mali) とンマイ川 (Nmai) は、カチン州中部において合流し、ミャンマー最大の河川であるイラワジ河 (Irrawaddy River) になります。ミッチーナーやバモーなどの都市はイラワジ川沿いに位置しています。

言語カチン人は言語的に多様な民族です。ジンポー語、ツァイワ語、ロンウォー語、ラチッ語、ンゴーチャン語、ラワン語、リス語など、シナ・チベット語族チベット・ビルマ語派に属する様々な言語が話されます。ジンポー語は言語多様なカチン人の間で共通語としても通用しています。このような言語多様性にもかかわらず、カチンの人々は共通の社会・文化的基盤を持ち、多かれ少なかれ1つの共同体を作っています。

社会カチンの多くの人々は、言語集団を超えた共通の社会を作っています。特に重要なのは、言語集団を横断する共通の氏族ネットワークによる結びつきです。カチンの人々は言語集団を超えたいくつかの氏族に属し、この遠近に基づいて婚姻関係などが決まります。氏族はさらに細かいリニージ (同姓集団) へと枝分かれしています。氏族名やリニージ名は各言語で必ずしも一致するわけではありませんが、これらの名称に言語を超えた対応関係を認めることができます。

文化カチンの最大の祭りはマナウ(Manau)祭りです。マダイと呼ばれる天の精霊を祀り、豊作や繁栄を祈願します。広場には精霊が依り憑くマナウ柱と呼ばれる渦巻や菱形が描かれた複数の柱が立てられ、人々は行列をなして柱のまわりを練り歩きながら、精霊に捧げる踊りを踊ります。カチンの民族衣装は、地域や言語集団の間で異なり、必ずしも同じものではありません。菱形紋様の刺繍が編み込まれていることが多く、それぞれの模様は意味を持ちます。ジンポー、ツァイワ、ロンウォー、ラチッなどの民族衣装には、龍の鱗を表す銀の飾りが施されています。

宗教カチン人の大部分はキリスト教徒であり、多くはバプティストです。カチンのそれぞれの村や町には教会があり、毎週、日曜礼拝が行われます。聖書はカチンの多くの言語に翻訳されています。キリスト教が布教する以前、もともとカチン人の宗教は精霊信仰 (アニミズム) でした。太陽の精霊、雷の精霊、水の精霊、大地の精霊、祖霊など様々な精霊が祀られ、マナウ祭りに代表されるように、その伝統は現在にも受け継がれています。